1回750〜2,000円。

保険が使える泌尿器科でテストステロン注射を受けた場合、自己負担はだいたいこの範囲に収まることが多い。

「補充療法って、具体的に何をするの?」

「注射を打ち続けるのか、薬を飲むのか」

「副作用はないのか」

WEB上で同じことを調べている人の声を見ていると、費用より先に「治療の中身が分からない」という不安が目につく。

費用だけなら月数千円で始められるのに、治療の全体像が見えないまま足踏みしている人は少なくない気がします。

この記事では、男性ホルモン補充療法(テストステロン補充療法/TRT)の治療方法・費用・注意点を、始める前に整理しておきたい情報としてまとめた。

私自身、検討段階でこの情報を一度に見たかったので、同じ立場の方に向けて書いています。

テストステロン補充療法とは

テストステロン補充療法は、加齢などで低下した血中テストステロン値を、外部から補って正常範囲に近づける治療のことです。

英語では Testosterone Replacement Therapy、略してTRTと呼ばれることもある。

対象になるのは、LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群――いわゆる男性更年期)と診断された場合。

血液検査で遊離テストステロン値が低く、問診で症状が確認された上で、医師が補充の必要性を認めたときに検討される治療です。

補充したからといって、20代の頃に戻るわけではない。

目的は「不足分を補って、日常生活に支障が出ない水準に整える」というもので、万能薬のようなイメージとは少し違う。

効果の出方にも個人差がある。

こうした前提を踏まえた上で、方法と費用を見ていきます。

治療方法:日本ではテストステロン注射が中心

日本でテストステロン補充療法に使われる薬剤は、エナント酸テストステロンの筋肉注射(商品名:エナルモンデポー、テスチノンデポー)が中心になる。

これが国内で保険適用されている唯一のテストステロン注射製剤です。

投与の間隔は2〜4週に1回

上腕や臀部の筋肉に注射する形で、通院のたびに医師が投与する。

自分で打つことはできないので、定期的に通院する必要がある。

海外ではクリームやジェル(塗るタイプ)、さらに長時間持続型の注射剤も使われているが、日本では未承認のものが多い。

一部の自費クリニックでは塗り薬(テストステロンクリーム)を扱っているところもあるものの、選択肢としてはまだ限られている。

注射以外のもうひとつの柱が、漢方薬。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や八味地黄丸(はちみじおうがん)など、保険適用で処方されることが多い。

テストステロンを直接補うのではなく、体調の土台を整える方向で使われるもので、注射と併用するケースもあります。

費用の目安

テストステロン補充療法の費用を、保険適用と自費に分けて整理した。

項目 保険3割の目安 自費の目安
テストステロン注射(1回) 750〜2,000円 5,000〜15,000円
漢方薬(1か月) 1,500〜3,000円
定期血液検査(3〜6か月ごと) 3,000〜5,000円/回 10,000〜20,000円/回
テストステロンクリーム(月) 5,000〜15,000円

※金額は医療機関・投与量・検査項目によって異なります。あくまで目安です。

保険適用の泌尿器科で注射(月2回)と漢方を併用した場合、月額は4,000〜7,000円前後の範囲に収まることが多いとされている。

定期検査(3か月に1回程度)を加えても、月あたりに直すと5,000〜9,000円前後になる計算です。

一方、自費クリニックに通う場合は月15,000〜30,000円以上になることもある。

費用が気になるなら、まずは保険適用の泌尿器科で相談するのが現実的な第一歩になる

検査から治療の費用全体を見たい方は、男性更年期は保険適用?自費?費用の目安で整理しています。

まず自分の状態を整理したい方へ

補充療法を検討する前に、今の症状を言語化しておくと医師との相談がスムーズです。

・男性更年期セルフチェック10項目。47歳のリアル →
・テストステロン検査の費用はいくら?40代が受ける前に知ること →

始める前に知っておきたい5つの注意点

テストステロン補充療法には、費用以上に知っておくべきことがある。

治療を始める前に、医師から説明されるであろう主なリスクを整理した。

1. 多血症(赤血球が増えすぎる状態)

テストステロン補充療法でもっとも注意が必要とされているのが、多血症(たけつしょう)。

テストステロンには赤血球の産生を促す作用があり、補充によってヘマトクリット値(血液中の赤血球の割合)が上がることがある。

ヘマトクリットが高くなりすぎると血液の粘度が上がり、血栓のリスクにつながる可能性が指摘されている。

このため、治療中は定期的にヘマトクリットとヘモグロビンを確認することが必要です(出典:LOH症候群診療の手引き)。

2. 前立腺への影響

テストステロンの補充が前立腺がんのリスクを高めるかどうかは、長く議論されてきたテーマ。

現在の見解では、「補充療法が前立腺がんを新たに引き起こすという明確なエビデンスはない」とされている一方で、既に前立腺がんがある場合は進行させる可能性がある。

治療前と治療中にPSA(前立腺特異抗原)を定期的に測定し、変動がないか確認するのが標準的な対応です。

3. 精子形成への影響

外部からテストステロンを補充すると、脳の下垂体が「テストステロンはもう十分にある」と判断し、精巣への指令(ゴナドトロピン)を減らす。

結果として、精巣が萎縮し、精子の産生が減少することが知られている。

今後子どもを望む可能性がある場合は、治療前に必ず医師へ伝える必要がある。

hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の併用や、補充以外の選択肢を検討してもらえることもあります。

4. 肝機能への負荷

注射剤による肝機能障害の頻度は高くないとされている。

ただし、もともと肝機能に問題がある場合は、治療前に確認が必要です。

経口剤(飲み薬)のテストステロンは肝臓への負荷が大きいとされ、日本では一般的に使われていません。

5. 自己判断で中断しない

補充療法を続けていると、体内のテストステロン産生が抑制されていることがある。

急にやめると、補充前よりもテストステロン値が下がる可能性がある。

減量や中止のタイミングは、必ず医師と相談して決めるのが基本です。

補充療法を受けられないケース

テストステロン補充療法には、投与してはいけない人(禁忌)が定められている。

  • 前立腺がん・乳がんの既往または疑い — テストステロンの補充が腫瘍の成長を促す可能性があるため。
  • 重度の多血症 — ヘマトクリットが既に高い場合、さらに上昇するリスクがある。
  • 重度の心不全・腎不全 — 体液貯留を悪化させる可能性がある。
  • 重度の肝障害 — 肝臓への負荷が懸念される。
  • 睡眠時無呼吸症候群が重い場合 — テストステロンが症状を悪化させる可能性が報告されている。

(出典:LOH症候群診療の手引き、エナルモンデポー添付文書)

また、先述の通り、挙児希望がある場合も原則として補充療法は推奨されない。

いずれも、治療開始前の問診と検査で確認されるものだが、自分から申告しておくことも大事です。

定期検査で何を見るか

テストステロン補充療法を始めたら、定期的な血液検査が必要になる。

日本泌尿器科学会の手引きでは、少なくとも3〜6か月ごとの検査が推奨されている。

  • テストステロン値(遊離テストステロン) — 補充で適正範囲に届いているかの確認。
  • ヘマトクリット・ヘモグロビン — 多血症のモニタリング。ヘマトクリットが54%を超えるようなら投与の減量・中断が検討される。
  • PSA — 前立腺がんのスクリーニング。半年ごとの測定が推奨される。
  • 肝機能(AST・ALT) — 異常がないかの確認。

検査の結果で投与量を調整したり、必要なら投与を中断したりする。

「注射を打ちっぱなしにする」治療ではなく、数値を見ながら微調整していくものだと理解しておいた方がいい。

始める前に医師に確認しておきたいこと

補充療法を検討する段階で、医師に聞いておきたい項目を整理した。

  1. 自分の症状と検査値で、補充療法の対象になるか
  2. 保険適用で受けられるか、自費になるか
  3. 投与間隔と通院頻度の見通し
  4. 定期検査の内容と費用
  5. 多血症や前立腺への影響について、自分のリスクはどの程度か
  6. 子どもを希望する場合の代替手段があるか
  7. 効果が出るまでの期間の目安
  8. やめる場合の減量手順

補充療法は「始めたら一生続ける」と決まっているわけではない。

症状が安定したら投与間隔を延ばしたり、生活習慣の改善と組み合わせて減量したりする選択肢もある。

ただし、始め方もやめ方も自己判断ではなく医師と一緒に決めるもの、という点は忘れないでおきたい。

まとめ:治療の中身を知ってから判断する

男性ホルモン補充療法は、特別な治療というより「足りないものを数値で見ながら補う」という地味な積み重ねに近い。

保険適用の泌尿器科なら、注射1回750〜2,000円、月数千円で始められる範囲に収まることが多い。

一方で、多血症や前立腺への影響、精子形成への抑制といったリスクがあるのも事実です。

費用は思ったより安いかもしれないが、リスクを知った上で始めるかどうかが大事で、この順番を逆にしない方がいい

検査を受けて数値を見て、医師と話して、それから判断する。

その判断材料のひとつとして、この記事が使えるものになっていれば幸いです。

受診の前に整理しておきたい方へ

補充療法を相談する前に、自分の症状を言語化しておくと問診がスムーズになります。

・男性更年期セルフチェック10項目。47歳のリアル →
・男性更年期かもと思ったら|受診前に整理すべき5つのこと →
・男性更年期は何科に行く?40代が相談先を間違えないために →

出典・参考情報

  • 日本泌尿器科学会・日本Men's Health医学会「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)診療の手引き」
  • エナルモンデポー添付文書(あすか製薬)
  • テスチノンデポー添付文書(日本新薬)
  • 厚生労働省「医療費の仕組み」(保険診療の自己負担割合)
  • LOH症候群における漢方療法の有用性(臨床泌尿器科 69巻1号)

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